進路のヒント 目指せグローバル人材 国際・教養・外国語を学ぶ

写真 松本 茂先生

英語教育と専門教育の融合を目指して 英語でも日本語でも経営学を学ぶ

立教大学 経営学部 国際経営学科教授
松本 茂 先生

国際性が求められるのは、社会科学系学問においても例外ではありません。2006年度に立教大学の9番目の学部として開設された経営学部。その一翼を担う国際経営学科は、経営学を英語で学べるということで、使える英語だけでなく専門性も身につけたいという受験生から高い支持を受けています。永年にわたりNHKの英語学習番組の講師を務め、シリーズ累計120万部を超えた『速読速聴・英単語』(Z会出版)の著者でもありながら、「高校時代は英語の落ちこぼれ」と自らを振り返る松本茂先生に、国際経営学科の取組と、高校で≪英語を英語で学ぶこと≫、大学で≪専門を英語で学ぶこと≫についてお聞きしました。

今日、多くの日本企業が「グローバル人材」を求めていると言われていますが、イメージされているのは、文化的に異なる背景を持った人たちと外国語、とくに英語でビジネスを展開できる力を備えている人です。しかし、日本語でも仕事ができることは当然のこととして想定されていますから、即戦力として通用するには、英語ができるだけではなく、日英両語で、専門的な知識を有し、しかもビジネス・プロジェクトを体験していることが求められています。

このような社会的ニーズを意識して、国際経営学科は、"バイリンガル・ビジネス・エデュケーション"を通じて、世界のビジネスシーンでリーダーシップを発揮できる人材を育てることを教育目的に開設されました(コラム1)。専門教育と英語教育の融合が大きな特色で、≪英語で≫、正確に言うと≪英語でも≫経営学を学ぶカリキュラムになっていて、専門科目の70%が英語で開講されています(コラム2)。

といっても、入学当時から英語力が極めて高い在外生活経験者は入学者の10%程度で、多くは日本の高校で伝統的な「文法・訳読方式」で英語を学んできた学生です。このような学生を2年次後期から専門科目を英語で学べるようにするために、2年次前期までに、英語でノートを取ったり、読んだ英文を英語でまとめたり、英語でプレゼンテーションしたりする力を伸ばすとともに、経営学の基本的な概念、専門用語、分析手法などを日本語でしっかりインプットし、企業との連携によるビジネス・プロジェクトに日本語で取り組みます。

高校時代、英語を英語で学んでいない学生にとって、専門を英語で学ぶということには二重のハードルがあります。そこで、英語を英語で学びながらスタディ・スキルを身につけ、かつ専門教育につながる学習と体験を日本語で行うことで、英語による専門科目の授業に比較的スムーズに対応できるのではないかと考えたわけです。なお、専門を英語で学ぶというカリキュラムになっているために、英語学習の動機づけに関しては、とくに問題を感じていません。これまで、大学における英語教育が成功していない大きな理由のひとつは、専門を英語で学ぶ機会を大学が提供していないということだと思います。

立教の経営学部では、少人数制の授業が多く、しかも学生主体の体験を重視した授業をできるだけ多くしています。初年次の日本語による『基礎演習(リーダーシップ入門)』や3年次の英語での『BBP(バイリンガル・ビジネス・プロジェクト)』をはじめ、数多くの授業で、協力してくださる企業をクライアントに見立て、依頼された課題、例えば新商品開発とマーケティング案などに対して、学生たちが実際に企業側に提案します。

2年次終了時に英語でどのようなことができるようになっているかという「学習成果(Learning Outcomes)」を設定し、科目ごとに学習成果も明示しています。さらに学生には、具体性を持たせた「can-doリスト」を渡しています。また、われわれのプログラムの教育効果については、外部試験(TOEICおよびGTEC for STUDENTS)でも検証していますが、学年が上がるとともに平均点は上昇しています。

海外留学・研修を体験しやすい条件も揃っています。国際経営学科の学生は全員、1年次の夏に3週間の海外研修に参加しますし、3・4年次生には、海外インターンシップを体験できる科目も開講されています。学部独自の海外協定校が31校ありますから、2年次後期以降、世界のトップクラスの大学で立教に支払う授業料のみで授業を受けられ単位も認定されます。さらに、各学期30から50名程度の交換留学生が、経営学部で日本人学生と一緒に英語で学んでいますから、日本に居ながらにして留学の疑似体験もできます。

国際経営学科では、近年、男女比が逆転して女子学生のほうが多くなっています。これまでは、外国語学部や文学部に入って英語の運用能力を高めたいと思っていた女子高校生が多かったと思いますが、今は「英語で何かをしたい」という女子生徒が増えていることをこの逆転現象は端的に示していると思います。

コラム1

コア・カリキュラムである「バイリンガル・ビジネスリーダー・プログラム(BBL)」を中心に「マーケティング」「マネジメント」「ファイナンス&アカウンティング」「コミュニケーション」の4つの専門領域が設けられている。

コラム2

英語で講義される専門科目のうち、学生が最初に受講するのは「ベーシック(Basic Courses)」(受講に必要な英語力の目安はTOEIC 600点、TOEFL iBT 60点)と位置づけられた『International Business-A』と『同B』。これらの英語サポート科目として、『ESP(English for Specific Purposes)-A』『同B』を原則として並行履修する。以後、やや易しめの英語で展開されるものの、英語サポート科目のない「シェルタード(Sheltered Courses)」(TOEIC 650点、TOEFL iBT 70点レベル)、英語圏と同じレベルの「メインストリーム(Mainstream Courses)」(TOEIC 730点、TOEFL iBT 80点レベル)へと、年次にそって難易度が3段階で構成されている。

高校時代には英語を英語で学んでほしい

国際経営学科の学生の多くが、入学後に最も苦労するのは、大量の英文を短時間に読むことです。何しろ、1つの専門科目の1週間分のリーディング課題が高校の教科書一冊ぐらいの量なのです。多くの高校の授業は、今でも文法の解説と、英文和訳が中心です。半ページ分の英文を50分近くかけて訳させて、文法事項を先生が日本語で解説する。また、多種多様なトピックが、何の関連性もなく盛り込まれている教科書の構成も問題です。同じトピックについて、ある程度の期間にわたって読み続けた方が、負担感がなく、英語に関する知識が定着しやすいのですが、現実はそうなっていません。

英語が使えるようなレベルに達するには、知識を英語化することと、英語を使う体験を積むことが欠かせないと考えています。そのためには、高校時代から、単語を英語で定義したり、読んだり、聞いたりした内容について、英語で議論するといったような活動を通して、≪英語を英語で学ぶ≫学習スタイルに慣れておく必要があると思います

易しい英文で書かれてある本をたくさん読むことも不可欠です。私も英語が上手になりたい一心で、高3の時に、勉強法を大幅に変え、『イソップ物語』や『シンデレラ』などを500語レベル程度の単語で書き直した本を何十冊も読んだものです。ペンギンやケンブリッジなどの出版社から、高校生でも読みこなせる易しい英文で書かれた本がたくさん出ています。中には『ビル・ゲイツ』など、社会性の高い内容のものもありますから、興味を持ち続けてたくさん読めるはずです。英文を読むことにある程度自信がつき、量にも抵抗を感じなくなったら、徐々にレベルを上げていく。そのうちに、理解するということは必ずしも日本語に訳せるということではないということに気づき、英語で英語のまま、つまり日本語に訳さなくてもわかっていると実感できるようになるはずです。

こういう本を読む時は、机に向かう必要はありません。少しぐらいわからない単語が出てきても、類推して、先に読み進めることが重要です。辞書を引くなら後でまとめて、それも英英辞書を使うべきです。こうやって多読することで、英語力の基礎を培うことができます。

※改訂された『学習指導要領』では、英語の授業は英語で行うことを基本とする、とされている。