進路のヒント 目指せグローバル人材 国際・教養・外国語を学ぶ

写真 蟹瀬 誠一 先生

世界で尊敬される日本人のために

明治大学国際日本学部 教授 学部長
蟹瀬 誠一 先生

志願者総数が2年連続で日本一となった明治大学。その中で、世界へ開いた窓として2008年に開設された国際日本学部。近年、有力私立大学が相次いで国際教養系学部を開設する中、≪日本≫の二文字が異彩を放ちます。学部長の傍ら、国際ジャーナリストとしても活躍される蟹瀬誠一先生に、グローバル人材や国際日本学部について、またご自身の体験も踏まえた高校生へのアドバイスをお聞きしました。

グローバル人材とは何か

グローバル人材という言葉の適否は別にして、世界で活躍するには、まず他の国の人から一個の人間として尊敬されなければなりません。そのためには、自分の国について誇りに思うこと、そして自分の国の良さをプレゼンテーションできることが欠かせません。これが、30年間、国際的なジャーナリズムの舞台で生きてきた私の結論です。国内では、アメリカやヨーロッパと日本を比較して、日本について貶めた言い方をする人が受けやすいですが、海外での評価は概ね低い。これでは真の国際人とはいえないのです。

戦前、戦後を通じて、日本では価値観の大きな転換が起こりましたが、その中でも国際人としての評価が揺るがないのが新渡戸稲造です。彼が英文で表した『武士道』は、各国語に翻訳され、世界中で多くの人に読まれましたが、アメリカのルーズベルト大統領にも大きな感銘を与えとされています。彼が訴えたのは日本人の独自の精神性であり、それは第二次世界大戦を経た今も、私たちの中に脈々と受け継がれていると思います。

グローバル人材といえば語学力ですが、今の世界情勢を見る限り、今後は英語だけでなく中国語も身につけたトライリンガルが求められるのではないでしょうか。具体的に求められる能力・資質については、これも「3」に関連しますが、アメリカのある著名な教育学者が≪3R から3Eへ≫と言っていたことを思い出します。3Rとは、読み(reading)、書き(writing)、そろばん(arithmetic= 算数、計算の意)です。3Eとは、探求する(explore)、表現する(express)、つまりプレゼンですね、それに共有する(exchange)ことが大事であることを示しています。計算や、知識の蓄積や保持などはパソコンに任せて、それらを駆使して課題を探究し、自ら発信するとともに、独創的な知恵やノウハウはこれまでのように独り占めせず、広く公開して他者と共有していくべきだということです。確かに無料のソフトや交流サイトは、公開することで大きく広がり、そのことが開発者の利益にもつながっています。

国際日本学部の挑戦

本学部は、数ある国際教養系の大学、学部には珍しく「国際」に加えて「日本」という名称を冠しています。真の国際人を目指すには、幅広い教養と使える外国語を身につけるだけでなく、日本のことを深く知ることが不可欠であることを訴えたかったのです。

コースは『日本文化コース』と『日本社会システムコース』の2コースで、日本の文化・伝統に加えて、戦前、戦後を通じて日本を国際社会の最前列へ押し出してくれた日本の社会システム、そして近年クールジャパンと呼ばれるような日本のサブカルチャーについて学べるのが大きな特色です。科目群は日本研究科目と、国際研究科目に大きく分かれ、日本研究科目には『漫画文化論』や『武道文化論』といったユニークなものも少なくありません。語学に関しては、現代社会ではやはり英語が必須ですから、それを身につけるためのトレーニングは他の国際教養系の大学に負けないぐらい、徹底して行います。少人数クラスで1年、2年の間は平均的な大学の必修英語時間数の約4倍を学びます。これは語学学校へ来たかと勘違いするほどの量で、当初は戸惑う学生も少なくありません。加えて、日本人学生にも『日本語表現』が必修なのも本学部ならではの特徴だと思います。

2年後期からは約半年の海外留学プログラムがありますが、必修ではありません。主に英語圏中心に、約70名の学生が出かけています。プログラムは受け入れ先の大学によってまちまちですが、例えばセメスター・インターンシップ留学プログラムのように、フロリダ州立大学とウォルト・ディズニー・ワールドが提携し、フロリダ州のオーランドにあるディズニーワールドでのユニークなインターンシップ(コラム参照)が体験できるところもあります。

卒業後の進路をイメージした履修モデルがあるのも本学部の大きな特徴です。業種として、≪マスコミ、出版≫に≪ツーリズムや商社≫、それに≪コンテンツ産業≫や≪外資系≫と、大きく4つ※1が設定されています。

"グローバル30"※2の一環として、今春から、入学して卒業するまで日本語を一切必要としない『イングリッシュトラック』もスタートしました。現在約160単位ほどの科目が用意されていますが、東アジアだけでなく、中東やヨーロッパからの留学生も、今後はさらに増えるのではないかと期待しています。

現在、留学生の占める割合は15パーセント程度ですが、日本人学生との交流という点では、彼らの作ったサークルに多くの日本人学生が加わるなど、みんなとても仲良くやっています。

2012年度には1期生の卒業に合わせて大学院の開設も予定しています。

また2013年度には中野の新キャンパスへ移転します。駅前の大変便利な立地で本学と早稲田大学など、3大学が拠点を設けます。中野は現在、ポップカルチャーの拠点になっていますから、ここへ留学生が加わることで、今までにない新しい文化が生まれるのではないかと期待しています。

※1 詳しくは≪マスコミ関係、出版関係、メディア産業、インターネット関連業種など≫、≪旅行、交通業、観光開発関連産業、貿易商社関連業種など≫、≪コンテンツ産業、文化芸能関連産業、知財関連産業、広告産業、映画産業など≫、≪外資系企業、政府系国際機関、その他国際機関、大学院進学など≫とされている。
※2 国際化拠点整備事業(グローバル30):文部科学省が大学を対象に行う支援事業のひとつ。世界的な人材獲得競争が激化するなか、日本の大学の『国際競争力』を高めるのが狙い。魅力的な教育内容を提供することで、『能力の高い留学生』を世界中から日本に集め、外国人留学生と日本人学生が「切磋琢磨」する環境を日本国内に設け、『国際的に活躍できる人材の養成』を図る。国公私立を問わず、質の高い大学教育、充実した留学生の受入れ体制を提供する大学の取組みから、特に優れたものを30件選定し、国際化拠点の形成を支援する。

高校生へのメッセージ

世の中の様々な出来事や問題に常に興味心を持ち、"why"と問いかけてみてください。そのうち、自分が人生をかけるに値するテーマが見えてくるはずです。そしてそれが見つかったら、現在の「先が見えない」とか「閉塞感があふれている」などの言説や、それによってもたらされている風潮に惑わされずに、それに向かって自分自身で黙々とチャレンジし続けてほしいと思います。

私は30年近く、国際舞台でジャーナリストとして生きてきましたが、あまり将来のことや世の中の風潮など考えずに、その時その時に精いっぱい努力してきたことが今につながったのだと思います。大学進学の第一歩として、絵も描けないのに美大を目指した高校時代、夢破れた後はこれからは英語だと思い立ち、立川駅前で基地の米兵を捕まえて英会話の勉強をした大学時代。また39歳の時には一旦仕事を離れて、家族を連れてアメリカの大学院へ進みました。それこそ今振り返れば綱渡りの連続です。何もかもが最初から決められていて、こうしたからこうならなければならない、などということはありません。自分のやりたいことを瞬間、瞬間に突き詰めていくのも一つの生き方なのです。

長くメディアの世界に身を置いてきた立場から一言。マスメディアの情報を鵜呑みにするのではなく、自分の目で見、耳で聞くこと。一人ひとりが明日の社会、明日の世界のことを自分なりに考えるようになってください。

フロリダ州立大学・ディズニーワールド提携 セメスター・インターンシップ留学プログラム

ディズニーが、全米の学生のために20年来開発してきた教育プログラム。ホスピタリティーを養い、プレゼン能力など社会で求められる力を、現場でのインターンシップや重役たちの講義を通じて身につけさせようというもの。まず学内選考があり、次に現地から最終セレクションのために面接官が訪れる。ちなみに面接では、英語力だけでなく人物も見られるという。大変な人気なため、フロリダ州立大学で半年、ディズニーワールドで半年学ぶといった1年コースも2011年度から開始。また、同様のプログラムがアジアでも実施されている。