補足的なリンク

東大が秋入学一本化を検討

キュレーター 後藤健夫

 タイトルは、今朝の日本経済新聞の1面を飾った記事の見出しである。東京大の社会、教育に及ぼす影響は大きいから1面のトップで扱われてもなにも不思議ではない。
 秋季入学は、臨教審(臨時教育審議会)で提言されたもの。臨教審の答申の多くは実現されていまの大学改革に繋がっているが、そのなかで唯一実現がされていないと言ってもいいのがこの秋季入学である。
 私も、大学改革のお手伝いを長らくしているが、この議論は必ずと言っていいほど出てくるもの。だから、秋季入学を実現させようと検討すること自体は新鮮味があることではない。
 ただし、いままでの議論は、慶應義塾大のSFC(湘南藤沢キャンパス)の総合政策学部、環境情報学部で開設当初から行っていたように、秋季入学のために入学者選抜を設けるかどうかというものが多かった。大学の講座も、通年からセメスターで開講されるものが多くなっているがゆえに、まったく対応できないわけではないが、いわゆる初年次教育に該当するような科目を春学期、秋学期双方におかなくてはならず、非効率になる。多くのケースはここで議論が終わる。そして、議論が進んだところで、なぜ秋季入学かといった問いに逆戻りして、「あっ、これは留学生のためのものか」となり、留学生だけなら大丈夫かといったところで終わるのが現実だった。
 今回、東大がこれを超えたのは、春入学、秋入学の二本立てでの検討をせず、入学試験はいままで通り、入学時期は秋入学に1本化としたことが大きい。もちろん私がお手伝いした他大学でもそういう意見は出たことがあったが、あまり重視されずに過ぎていった。また、やれるものならやりたかったとこの記事を読んで悔やんでいる大学の行政者もいるだろうが、社会的なインパクトに欠けて、入学までの時間をどうするんだ、入学予定者の身分はどうするんだと言った批判だけを浴びることになったかもしれない。そういった意味では東大だからできること、すべきことである。
 濱田純一総長が日本経済新聞の取材に、秋季入学に答えたということは、それなりの見通しがあってのことだろう。
 ここからは推測だが、今回取材をした横山晋一郎さんが、東京工業大、京都大のグローバル人材プログラムに対して東大はいかにと問うたのではないだろうか。それに対して濱田総長は一部の学生をグローバルに育てるのではなく、全員をグローバルに育てるのだといったやりとりがあったかもしれない。いずれにせよ、今回、日本経済新聞がスクープできたのは、先日改定された「行動シナリオ」を横山さんが丹念に読んで取材した結果であることは間違いない。さすが横山さんである。
(横山さんは日本経済新聞の月曜日朝刊の教育面を長年担当されている。私も親しくさせていただいている)
 昨年、私が濱田総長にお会いしてインタビュしたときに、女子学生の比率が小さいのは入学選抜の段階で女子受験生が不利になるような要素が潜んでいないか、いまの東大入試は本当に優秀な生徒を選抜しているのかと問うたところ、「私の問題意識とまったく同じだ。触発された」と答えてくれた。
 あらためて、行動シナリオを読むと、東大の危機感が伝わってくる。「タフな東大生」を育てるためには、スタッフもタフでなければならない。
 未曽有の災害が起きたいまこそ学問研究に大きな期待がかかる。もちろん次代のリーダー養成は急務だ。
 秋季入学にとどまらず、まだまだいろいろな面で東大の改革が進むだろう。注目したい。

*今回の記事でも引用されている「東大行動シナリオ」(行動シナリオ FOREST 2015)は下記を参照下さい。

http://www.u-tokyo.ac.jp/scenario/


*濱田総長へのインタビュー(91号)

http://djweb.jp/pdf/vol91.pdf

▲ページTOPへ